2015年7月20日月曜日

神の大いなる怒りの日(ジョン・マーティン)

20年前。書店で、凄い画集を手に取った。

天地が裂ける。雷鳴が轟く。
洪水が渦巻く。人々が雪崩を打つ。
近景から遠景に向かって、凄まじい広がりと奥行き。
絵のなかに吸い込まれそうになる。

画家は、ジョン・マーティン。
1854年に64歳で亡くなった。
壮大なビジョン。巨大なスケール。
「狂えるマーティン」と呼ばれたと云う。

「神の大いなる怒りの日」

「ポンペイとエルコラーノの壊滅」

「大洪水の前夜」

メゾチントの絵も、油彩に劣らず凄まじい。
また、細部まで緻密に描き込まれて臨場感がある。
渦巻く雲や、遥かに見える光源を背景に、
不穏で湿った空気や冷たい岩肌などの触感さえ
身内に湧いてくる。

「バビロンの陥落」

「アダムとエヴァの楽園追放」

「混沌にかかる岩橋」

ジョン・マーティンは、画家としての名声を確立したのち、
上下水道設備の改良を主体とした都市計画に打ち込んだらしい。
自らの資産を注いだプランは、しかし規模壮大に過ぎて
実現にはほど遠く、見果てぬ夢であり続けた。

都市計画の夢破れ、破産同然の彼が、晩年に最後の力を振り絞って描いたのが
「審判三部作」であり、そのうちの1枚が、冒頭の「神の大いなる怒りの日」である。

この恐るべき空想力とビジョンは、古典を超えモダンであり、
現代の絵画やイラストレーションに通ずるものと思う。

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