朝から美術展や本屋をまわった。
その「ベルギー王立美術館コレクション」展で、
とても惹かれる作品に出会った。
薄暮のなかの、芝生の庭が描かれている。
庭は長方形で、手前から奥に長いほうの縁が延びている。
手前の辺とそれに続く長辺のまわりは、
あじさいのような花をたくさんつけた、膝くらいの高さの植え込みが
まるで薄緑色の堤防のように縁取っている。
長辺の堤防の外側には隣接して、背丈以上もある植え込みが
もっと青白い毬のような花を一面につけて、
植え込みの樹自体もそれぞれが球体のように刈り込まれて
厚く庭を囲っている。
それぞれの長辺のまん中あたりは、そこだけ植え込みが途切れて、
縁の少し奥に、白くがっしりした2人掛けのベンチが置いてある。
向かって奥の辺だけは、花の植え込みではなく石の柵で仕切られていて、
そのまん中には石段が3段あり、こけしのような太い2本の石柱の間は
人が通れるほどに開いている。
そこから庭の外に出て、奥に続く森のなかに入っていくことができる。
庭の奥に広がる森は、ところどころに不思議な光を放つ。
夕暮の庭には、だれもいない。静寂が覆っている。
ただ、そこは、花の香りと森の精気に満ちている。
静かだが、生命の神秘に溢れている。
この魅力的な絵の前で立ちつくし、この豊かな幻想に浸った。
アンリ・ル・シダネル「黄昏の白い庭」(1912年) |
アンリ・ル・シダネルの作品は、そのとき初めて観た。
ほかにも素敵な絵をいくつも描いていた。
その後開催された「アンリ・ル・シダネル展」には行くことはできなかったが、
図録だけは手に入れて、その薄暮に煌めく光と幻想的な空気を楽しんでいる。
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