2015年9月13日日曜日

薄暮のなかの神秘 シダネル「黄昏の白い庭」

自分の記録によれば、5年前の誕生日は休日で
朝から美術展や本屋をまわった。

その「ベルギー王立美術館コレクション」展で、
とても惹かれる作品に出会った。

薄暮のなかの、芝生の庭が描かれている。

庭は長方形で、手前から奥に長いほうの縁が延びている。
手前の辺とそれに続く長辺のまわりは、
あじさいのような花をたくさんつけた、膝くらいの高さの植え込みが
まるで薄緑色の堤防のように縁取っている。

長辺の堤防の外側には隣接して、背丈以上もある植え込みが
もっと青白い毬のような花を一面につけて、
植え込みの樹自体もそれぞれが球体のように刈り込まれて
厚く庭を囲っている。

それぞれの長辺のまん中あたりは、そこだけ植え込みが途切れて、
縁の少し奥に、白くがっしりした2人掛けのベンチが置いてある。

向かって奥の辺だけは、花の植え込みではなく石の柵で仕切られていて、
そのまん中には石段が3段あり、こけしのような太い2本の石柱の間は
人が通れるほどに開いている。
そこから庭の外に出て、奥に続く森のなかに入っていくことができる。

庭の奥に広がる森は、ところどころに不思議な光を放つ。

夕暮の庭には、だれもいない。静寂が覆っている。
ただ、そこは、花の香りと森の精気に満ちている。
静かだが、生命の神秘に溢れている。

この魅力的な絵の前で立ちつくし、この豊かな幻想に浸った。


アンリ・ル・シダネル「黄昏の白い庭」(1912年)

アンリ・ル・シダネルの作品は、そのとき初めて観た。
ほかにも素敵な絵をいくつも描いていた。

その後開催された「アンリ・ル・シダネル展」には行くことはできなかったが、
図録だけは手に入れて、その薄暮に煌めく光と幻想的な空気を楽しんでいる。

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