2015年7月12日日曜日

芳醇な世界への水先案内 「幻想文学1500ブックガイド」ほか

20年近く前。
仕事で20人の部下をもち、自らもプロジェクトをこなす毎日。
気がつけば、仕事に関係する本しか読んでいない。
そして、心が乾いていることに、危機感を抱いた。

新聞の書評などを頼りに、久々に小説を買った。
ただ、読書の充実感は、まだ取り戻せなかったように思う。

そんなとき、やはり書評に載ったのが、「幻想文学1500ブックガイド」。
“幻想文学”とはどのようなジャンルを指すのか、あまり意識せずに買ってみた。

そして、理解した。
なんと、“幻想文学”とは、子供のころに読んでいた
幽霊、妖怪、妖精、異世界などにまつわる、怪奇と不思議の物語であると。

小学生のころ、「世界の名作怪奇館」(講談社)や「世界怪奇スリラー全集」(秋田書店)を
図書館で借りて、何度も読んだ。
また、小学4年で、平井呈一訳の「怪談」を文庫で読んだ。

もちろん、不思議な物語だけを読んでいたのではない。
物語をたくさん読んだし、ルブラン、コナン・ドイル、ウェルヌ、江戸川乱歩、海野十三など、
探偵小説やSF小説も読んでいた。
中学時代に、欧米の推理小説に夢中になり、高校では日欧の古典的な小説に挑み、
大学では、村上春樹などの旬の作家と、演劇や美術に関連した本を主に読んでいた。

そして、30代なかばで“幻想文学”に久々に触れたとき、二十数年のときを飛び越えて、
再び血が騒いだ。

「幻想文学1500ブックガイド」を参照して、面白そうな本を探してみた。
驚いたのは、紹介されているかなりの本が、絶版になっていたこと。
そこで、ネット古書店やネットオークションで、コツコツと本を買いためていった。

もう一冊、単なるガイドを超えた貴重な本は、「世界幻想作家事典」だ。
荒俣宏の労作、力作だ。本の刊行時、彼は30歳を超えたところ。
その齢で、よくもこれだけの作家情報を網羅したものだと驚嘆する。

この本は、福井駅前の古書店で偶然手に取るまで、その存在は知らず、
凄い獲物を得たと喜びながら、出張から帰った覚えがある。

幻想文学の水先案内となる、貴重な2冊


以降は、幻想文学を中心に蔵書が形作られることになった。
また、幻想文学のガイド本も、次第に増えていった。



ふりかえれば、これらのガイド本によって、素敵な本を得て、芳醇な世界に遊べた。
今は、仕事や日常生活に追われ、本を読む時間そのものが取れない。


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