2015年3月15日日曜日

さわやかで、温かな歌声(Julie Andrews)

中学2年のとき、テレビで「サウンドオブミュージック」を観た。
ジュリー・アンドリュースがいっぺんに好きになった。
容姿もだが、あの歌声が堪らなかった。

さわやかで、温か。高い音でも柔らかく、よく通る。
包み込むような優しさや、コケットにはずした感じもよい。

当時はビデオもインターネットもない。
レコードを買うでもなく、映画雑誌「スクリーン」に載る写真で
お茶を濁していた。

幸い、次の年に彼女が来日した。
「スター千一夜」を録音(41歳で孫がいることに驚く)、
そして、ラジオの特集番組を2つ録音した。

矢島正明がナレーターを務めた録音もよく聴いたが、
もう一方、NHK-FMの番組は解説を最低限にして
全部で16曲をかけてくれた。

このテープ録音を何度聴いたことか。

そして、前半と後半の各8曲が、ひとつの物語かショーのように
流れをつくっているかのごとく思えてきた。

◆録音した曲名ラインナップ

It Might As Well Be Spring 春のごとく
So In Love
Wouldn't It Be Loverly? 素敵じゃない?
Baubles, Bangles and Beads ビーズと腕輪
Without You あなたなしでも
How Are Things in Glocca Morra? グロッカ・モラの様子はいかが?
A Sleepin' Bee
I Feel Pretty

Cheek to Cheek
Falling In Love With Love 恋に恋して
I Could Have Danced All Night 踊り明かそう
How Long Has This Been Going On?
I Didnt Know What Time It Was
By The Light Of The Silvery Moon
Alexander's Ragtime Band

当時は決まって、ベッドに寝転がって、イヤホンで聴いた。

冒頭の「春のごとく」。何かが始まるようなイントロに、気持ちが高ぶる。
春の気分を思い切り満喫したあと、一転、「So In Love」でキリリと締まる。
日曜洋画劇場の最後に流れていたこの曲は、それまで陰鬱な印象が強かったが、
彼女が歌うと、悲劇的ななかにも透徹した美しさがあって、とても好きだった。

3曲目の「素敵じゃない?」でリラックスし、続く「ビーズと腕輪」。
夢に誘うようなイントロと共に、宙に舞うような歌声が聴ける。
5曲目は、また一転。「あなたなしでも」は、イライザのやけくそな歌。
ただ、ジュリーが歌うと、力強さとともに彼女の上品さも感じられて
勇気づけられる歌になるから不思議だ。

フルートのイントロで始まる「Glocca Morra」。
さわやかな抒情。心が洗われるような曲だ。
次の「Sleepin' Bee」は、少しけだるい明るさで、
過ぎし日を想う哀しみが感じられる。
そして、「I Feel Pretty」で、素敵に元気に力強く、前半を終える。

後半の初めの2曲は、一番の山場だ。

「Cheek to Cheek」は、このなかのベストだ。
この曲のイントロが聴こえると、なぜか懐かしい気持ちで一杯になる。
そして、ジュリーの甘く優しい歌声とともに、夢の世界へ入っていく。
高音部で音をはずしてしまったりするが、まったく問題なし。
2分足らずの曲だが、最後まで夢見心地で、緩やかに低音へ移って終わる。

次の「恋に恋して」。
「モルダウ」の冒頭のような、川の流れをイメージさせる印象的なイントロ。
徐々に盛り上がり、ハッと落ちたかと思うと、
思いつめたような、それでも真っ直ぐな歌声が聴こえてくる。
技術的に、余分な飾りはない。
抑えて始まるが、徐々に高揚し、思いのたけを清らかに歌い上げる。
この曲のジュリーは、真正面から直接、聴く者の心に届くように
切実な気持ちを込めて歌っている。

オンエア時、番組の時間調整のためか、この曲は中間奏まででカットされた。
録音を聴くたびに残念に思うとともに、
どんな終わり方をするんだろう、と色々と想像した。
1分半あまりの短い録音だったが、深く心に残った。

後半3曲目は「踊り明かそう」。大曲で、山場の最後にふさわしい。
次の2曲は、クライマックスが過ぎたあとの
どこかもの哀しい気持ちで聴いていた。

そのあとの曲名、曲順ははっきりと覚えていない。
ただ、にぎやかな残り2曲は、あまり身を入れて聴かなかった。
やはり、ジュリーのきれいな歌声が活きる曲が好きだ。



録音したテープは大切に扱ったが、最後は擦り切れて大学時代に聴けなくなった。
以来、半世紀ほどは、心のなかだけにフレーズが残ったが、
あるときCDを4枚買って、久々の歌声を懐かしく聴いた。
そして初めて、「恋に恋して」をすべて、聴くことができた。
とても満足した。





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