2015年6月14日日曜日

洒落た楽屋ネタ 「ヒチコックと少年探偵トリオ」(ロバート・アーサー)

小学生の2年から3年にかけて母に買ってもらい、胸躍らせながら読んだ4巻本。

「ヒチコック」というのが映画監督で、まだ本編を観る前から、
「サイコ」や「鳥」などのどんなシーンがどのように怖いかを、
母から教えてもらっていた。

「ヒチコックと少年探偵トリオ」(表紙絵:山本耀也)

子供心に断トツに面白かったのは、第1巻の「恐怖城の秘密」だ。

まず、“まえがき”。
「読者諸君 読みたくない人は、このまえがきはひとことも読む義務はありません。
 アルフレッド=ヒチコック」。
こう書いてあって、読まない人はなかろう。
そして、このまえがきは物語の予告編であり、かつ見事な導入部になっている。

物語は、3人の「少年」、というより在学中の青年たちが
探偵トリオ社を結成するところから始まる。
天才、ジュピター・ジョーンズ、長身、筋肉質のピート・クレンショー、
記録情報係のボブ・アンドルーズ。

右から、ジュピター、ピート、ボブ

ジュピターがクイズの懸賞で、“運転手つきのロールスロイスを30日間貸す”権利を
得たことで、彼らの活動は俄然、面白味を増す。
3人は、ヒチコックのオフィスまでロールスロイスを乗りつけ、
ジュピターの演技の才覚で、その活躍を記録した本(当然未刊)に
ヒチコックが序文をつけて世に送り出す約束をさせてしまう。

このように、初めから楽屋を見せている物語は、実はヒチコックの友人の作家、
ロバート・アーサーが書いているからできる技だ。

謎解きや活劇がふんだんに盛り込まれていて飽きないが、
シリーズを通じた洒落た楽屋ネタが、実は子供にも面白かった。
そして、各巻の裏表紙はいずれも、ヒチコックが彼の映画さながら登場している。




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