2015年2月14日土曜日

夢幻に天駆ける(グリーグ ピアノ協奏曲)

ピアノ協奏曲といえば、ラフマニノフの3番が特に好きだ。
チャイコフスキーもわくわくするし、最近ではリストの2番も華麗でいい。

ただ、最も好きで、よく聴きこんだのは、グリーグ。
そして、グリーグのピアノ協奏曲といえば、リパッティ。
本当に、胸が高鳴る演奏だ。

高校1年のとき、自宅にあったレコードを聴いて、完全にはまった。
ベッドに寝転び、足元にあるスピーカーのすぐ前に耳を寄せて、
毎日のように聴いた。

グリーグ ピアノ協奏曲のレコード

地の底から湧きあがり、天を一刀のもと両断するような冒頭。
荘重に始まり、その後一転して柔らかな夢幻の曲調に転じる第1楽章は、
冒頭のメロディに戻り、魂を揺るがして終わる。

第2楽章は、静かに震えるように始まり、
ピアノが軽やかに夢のなかを巡り、徐々にオーケストラと盛り上がる。
そして、楽章冒頭のメロディが力強く奏でられ、
また夢のなかへ戻っていく。

急転直下、現実に引き戻されるかのように、
第3楽章は、速く力強いテンポを告げる。
うねるように、急峻の山から凍てついた原野を疾駆して荒々しいが、
ただ、どことなくユーモアも感じさせる。

いったん早駆けを収め、遥かな白い下界を見渡せる峰に立つ。
清浄で張り詰めた空気のなか、フルートが無限のかなたへ
生命の素晴らしさを歌い放つ。
それを受けて、ピアノが芳醇そのものに奏で、ゆったりと天を飛翔する。
真に感動的だ。

忽然と地に降り立ち、再び早駆けが始まる。山や谷を切り通る。
目指す理想の地は近い。曲調はダイナミック。否応なく高鳴る。
そして、終着点が見えた。ファンファーレが鳴る。
明るくコケットな祭気分に包まれたかと思えば、もうそこは目指していた世界。
雄大な景色とともに、再び生命の讃歌が劇的に鳴り響き、天へ飛翔し去る。

・ ・ ・

ピアノ演奏者は、ディヌ・リパッティ。
天才で、若くして病で亡くなったと、親に教えてもらった。
図書館でレコード評も読み、リリシズム、気品のある演奏とは
まさにこういうことかと納得した。

リパッティのCD

高校2年のとき、「レコード芸術」の夭折の音楽家特集で
見開きの2ページのリパッティの記事がでていた。
学校の図書館の司書の方から、保存期限の切れたその雑誌をひそかに譲り受け、
長らくそれが、リパッティを知る最も詳しい記事であった。

7年前、日本語で書かれたリパッティの評伝を見つけた。
2007年刊。生誕90周年とのことだが、死後半世紀以上経つ演奏家の評伝が
日本人の著作として世に出ることが、にわかに信じられない快挙と感じた。

リパッティの評伝






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