チャイコフスキーもわくわくするし、最近ではリストの2番も華麗でいい。
ただ、最も好きで、よく聴きこんだのは、グリーグ。
そして、グリーグのピアノ協奏曲といえば、リパッティ。
本当に、胸が高鳴る演奏だ。
高校1年のとき、自宅にあったレコードを聴いて、完全にはまった。
ベッドに寝転び、足元にあるスピーカーのすぐ前に耳を寄せて、
毎日のように聴いた。
グリーグ ピアノ協奏曲のレコード |
地の底から湧きあがり、天を一刀のもと両断するような冒頭。
荘重に始まり、その後一転して柔らかな夢幻の曲調に転じる第1楽章は、
冒頭のメロディに戻り、魂を揺るがして終わる。
第2楽章は、静かに震えるように始まり、
ピアノが軽やかに夢のなかを巡り、徐々にオーケストラと盛り上がる。
そして、楽章冒頭のメロディが力強く奏でられ、
また夢のなかへ戻っていく。
急転直下、現実に引き戻されるかのように、
第3楽章は、速く力強いテンポを告げる。
うねるように、急峻の山から凍てついた原野を疾駆して荒々しいが、
ただ、どことなくユーモアも感じさせる。
いったん早駆けを収め、遥かな白い下界を見渡せる峰に立つ。
清浄で張り詰めた空気のなか、フルートが無限のかなたへ
生命の素晴らしさを歌い放つ。
それを受けて、ピアノが芳醇そのものに奏で、ゆったりと天を飛翔する。
真に感動的だ。
忽然と地に降り立ち、再び早駆けが始まる。山や谷を切り通る。
目指す理想の地は近い。曲調はダイナミック。否応なく高鳴る。
そして、終着点が見えた。ファンファーレが鳴る。
明るくコケットな祭気分に包まれたかと思えば、もうそこは目指していた世界。
雄大な景色とともに、再び生命の讃歌が劇的に鳴り響き、天へ飛翔し去る。
・ ・ ・
ピアノ演奏者は、ディヌ・リパッティ。
天才で、若くして病で亡くなったと、親に教えてもらった。
図書館でレコード評も読み、リリシズム、気品のある演奏とは
まさにこういうことかと納得した。
リパッティのCD |
高校2年のとき、「レコード芸術」の夭折の音楽家特集で
見開きの2ページのリパッティの記事がでていた。
学校の図書館の司書の方から、保存期限の切れたその雑誌をひそかに譲り受け、
長らくそれが、リパッティを知る最も詳しい記事であった。
7年前、日本語で書かれたリパッティの評伝を見つけた。
2007年刊。生誕90周年とのことだが、死後半世紀以上経つ演奏家の評伝が
日本人の著作として世に出ることが、にわかに信じられない快挙と感じた。
リパッティの評伝 |
0 件のコメント:
コメントを投稿