2015年5月17日日曜日

生涯ベストワンの映画 「赤い靴」(5)

「赤い靴」を観るたびに、この映画の製作者が
自信と確信をもって、愉しみながら映画をつくっていたのだと感じる。
そして、もしこの現場に居合わせることができたら
生涯の宝になるほどの経験であったろう、と思う。

この夢のような映画では、ろうそくや燭台が印象的に使われている。
映画の開始と終了は、焔をあげるろうそくであるし、
ヴィッキーとボリスのパーティーでの出会いのシーン、
そして、ジュリアンの深夜の作曲にヴィッキーが寄り添うシーンに、
燭台が配置されている。
 


また、映像美も心に残る。バレエシーンは言うに及ばないが、
何気ないシーン、たとえば、グリシャの誕生パーティのシーンや
ボリスと再会する駅のシーンなど、色彩が豊かで美しい。


では、「赤い靴」の登場人物と役者たちを紹介しながら、この書きものの締めくくりとしよう。

冒頭のジュリアンの友人たち。
太っちょのアイク。いい味を出している。ジュリアンを好いているテリー。
TERRY:JEAN SHORT,IKE:GORDON LITTMANN
バレエ狂のザンティップとボーイフレンドのガス。
のっけから、ジュリアンたちと険悪なムード。
XANTIPPE(A BALLETOMANE):JUKIA LANG,GUS(HER MATE):BILL SHINE
ボロンスカヤのパートナーは、控え目な老紳士。
ほとんど科白はないし、エンドタイトルにも出ていない。
上流階級に身を投じたボロンスカヤとのカップルは、
若い才能どうし、将来に不安もあるヴィッキー・ジュリアンの組とは好対照だ。

マダムランバートは、そのままの役名で少しだけ登場。著名なダンサーで教育者。
ボリスがヴィッキーに目を留めた「白鳥の湖」のシーンで。
MADAME RAMBERT
ヴィッキーの友人、オールダム卿。貴族でビジネスもこなせる雰囲気。
ただ、出番は少ない。
LOAD OLDHAM:DEREK ELPHINSTONE

コヴェント・ガーデン劇場の守衛、ジョージ。損得勘定のおっさんをうまく演じている。
STAGE-DOOR KEEPER:JERRY VERNO
ボリスの忠実な僕、ディミトリ。出しゃばらないが、登場頻度は高い。
ヴィッキーの再訪を知らせる場面では、珍しくノックもせずにボリスの部屋に入り、
気持ちが高ぶらせたアップの場面がある。
DIMIORI:ERIC BERRY
モンテカルロの劇場支配人のブータンと舞台監督のリドゥ。彼らも芸術に忠実で善人だ。
前者は調子に乗りやすく、後者はいかにも実直だ。
M.BOUDIN:MARCEL PONCIN,M.RIDEAUT:MICHEL BAZALGETTE
いかにも勿体をつけたパルマー教授。作曲家かつ教師にしては策士で、腹に一物。
PROFESSOR PALMER:AUSTIN TREVOR
ネストん夫人。上流階級ながら俗っぽく、けして上品とはいえない。
パルマー教授とともに、俗人の雰囲気をうまく出している。
LADY NESTON:IRENE BROWNE
指揮者リヴィー。プライドは高く、バランスのとれた常識人。
ボリスの創造に、欠けがえのない人物を手堅く演じる。
LIVY:ESMOND KNIGHT
美術監督、ラトフ。軽妙で温和。
ボリスが頼りとし、彼と対等に話ができる、ほぼ唯一の人物。
RATV:ALBERT BASSERMAN
イリーナ・ボロンスカヤ。現代にはいない、ふくよかな体形のダンサー。
着やせするタイプで、素敵な装いで軽やかに歩く様は格好よい。
BORONSKAJA:LUDMILLA TCHERINA
イワン・ボレスラフスキー。主役級ダンサーだが、マイペースで、どこか他人事。
「赤い靴」の本番前には、ボリスの握手に気づかないほどアガる。
また、ボリスの重要な決定会議に、彼は入らない可笑しさ。
ロバート・ヘルプマンは、この映画で振付師としても大活躍。
IVAN BOLESLAWSKY:ROBERT HELPMANN
グリシャ・リュボフ。エキセントリックなダンサーと「赤い靴」の狂言回し。
マシーンは、ディアギレフに見出された伝説的なダンサーで
この映画の出演時は50歳を超えていたが、高く柔らかい跳躍は見事である。
GRISCHA LJUBOV:LEONIDE MASSINE
ジュリアン・クラスター。作曲家、指揮者。
役者のマリウス・ゴーリングは、シーンによって演じる表情が異なる。
俗っぽさ、崇高さ、初々しさ、ふてぶてしさなど、色々な味を出している。
6年後の映画「裸足の伯爵夫人」では、いやらしい中年男を演じ、別人のようだ。
JULIAN CRASTER:MARIUS GORING
ボリス・レルモントフ。プロデューサー。
芸術にかける熱情と厳格を自他ともに求め、俗人には辛辣このうえない。
まさに、この映画のはまり役。圧倒的な存在感である。
BORIS LERMONTOV:ANTON WALBROOK
ヴィクトリア・ペイジ。ダンサー。
この役は、モイラ・シアラーの名を永遠のものとした。
VICTORIA PAGE:MOIRA SHEARER











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